2020年12月のテーマ 国産派宣言
1、12月のテーマは「国産派宣言~誰もが有機農産物を食べることができる社会へ」です。
2、はじまりはコウノトリ
コープ自然派の「国産派宣言」は、2006年コウノトリの郷・兵庫県豊岡市での「田んぼの生きもの調査」の活動からはじまりました。「田んぼの生きもの調査」は、生産者と一緒に田んぼに入り、生息する生きものを調査する活動です。生きものと農業、そして食べものとのつながりが実感できるこの活動をきっかけに、日本の森・川・海の自然環境を土台とした安全な食べもの運動「国産派宣言」がはじまりました。
3、食料自給率
日本の食料自給率は約38%です。これは食料安全保障上、とても危険な状況だと思います。細かく紹介すると、米98%、小麦17%、大豆22%、野菜76%、畜産物15%、魚介類54%、果実32%、油脂3%・・・というかんじ。ちなみに畜産物は、日本で育てられた畜産物という意味でいうと62%になります。そのうち15%分が国産飼料で、47%分が輸入飼料で育てられています。目に見える食べものだけでなく、飼料の自給率も上げていかなければいけません。食料安全保障の意味でも、国産を推進していくことは大切です。
4、フード・マイレージ
フード・マイレージは、食料の ( = food) 輸送距離 ( = mileage)」という意味で、食べものの生産地と消費地が近いほど、輸送で排出されるCO2が少なくなり環境に良いという考え方です。日本は食料自給率が低く、食料輸送量が多い×輸送距離が長いことからフード・マイレージがとても高くなっています。環境の面から考えても、国産を推進していくことは大切です。
5、地域循環型社会
日本で農業に従事している人は現在約180万人で年々減少しており、高齢化も進んでいます。農業人口が減っているのは、農業では儲からない時期が長く続いたからではないでしょうか。林業も漁業も同じです。国産を推進することで日本の第一次産業にお金が回るようになる。そして田んぼや畑を中心に森・川・海の環境を守っていく。そんな地域循環型社会を目指しています。
6、NON-GMO
とはいえ、国産なら大丈夫?というおはなし。日本は、遺伝子組み換え(GM)作物の商業栽培が行われていないにも関わらず、世界で最もGM作物を消費している国のひとつです。その大きな理由は、食糧自給率の低さゆえに、輸入されるGM作物に頼らざるを得ないからです。いま日本で流通しているのは大豆、ナタネ、トウモロコシ、綿実ですが、その多くは飼料や食品添加物、植物油脂などに使われています。コープ自然派ではGMOに反対するとともに、カタログの商品にNON-GMOマークを掲載しています。
7、グリホサート 小麦の場合
除草剤グリホサートは、がんをはじめとするさまざまな健康被害の原因であると考えられるようになり、世界中で規制が進んでいます。ところが日本では2017年にグリホサートの残留農薬基準値が緩和されてしまいました。世界中で行き場を失ったグリホサートが日本になだれ込んでくるかもしれません。昨年、農民連食品分析センターが行った残留調査では、海外産小麦を使った製品(パン、パスタ、小麦粉など)のほぼすべてからグリホサートが検出された一方、国産小麦の製品からは検出されていません。小麦に関しては、グリホサートを体に取り込まないためにぜひ国産小麦を選んでほしいと思います。
https://earlybirds.ddo.jp/bunseki/report/agr/glyphosate/wheat_bread_1st/index.html
8、グリホサート 大豆の場合
小麦とは違い、大豆の場合、日本でも一部地域で大豆への収穫前除草剤(収穫前に枯らして収穫しやすくする)としてグリホサートが使用されるようになってしまいました。コープ自然派では、大豆は ①有機JAS認証がとれている ②農薬の残留検査で不検出 ③産地証明によりグリホサートの使用のない地域を確認 ④栽培履歴によりグリホサート不使用を確認 などの取り組みをすすめ、カタログでもマーク表示をつけて選べるようにしています。また、グリホサートはホームセンターなどでも普通に買える除草剤です。田んぼのあぜや庭の除草に使っている家庭もあるかもしれません。くらしの中のグリホサートにもぜひ気をつけてくださいね。
9、ネオニコ農薬 食品の場合
「人体に安全な農薬」として爆発的に普及した殺虫剤ネオニコチノイド系農薬。その後数々の深刻な健康被害が報告されるようになったにも関わらず、規制するどころか残留基準が緩和されてしまい、現在の日本は「ネオニコ大国」となってしまっています。ネオニコチノイド系農薬は神経の伝達を乱すので、脳神経の発達が盛んな胎児や小さな子どもがとても心配です。コープ自然派では2010年よりネオニコ排除を掲げ、生産者とともにネオニコフリーを目指して取り組みをすすめ、カタログでもマーク表示をつけて選べるようにしています。コープ自然派ホームページのトップページに動画がありますので、ぜひごらんください。
https://youtu.be/_JeBKkQ3pn0
10、ネオニコ農薬 日用品の場合
ネオニコチノイド系農薬はくらしの身近な日用品にも使われています。例えばダニやゴキブリ、アリの殺虫剤やシロアリ駆除剤、ペットのシラミ・ノミ取り、住宅建材、資材(壁紙、フローリング、断熱材など)、ガーデニング用殺虫剤などなど・・・。一般にネオニコチノイドと呼ばれる化合物は、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラムの7種類。これらの成分の入っているものは避けていただきたいと思います。
11、放射性物質
2011年に起きた、福島第一原発事故。大量に放出された放射性物質は、政府発表によると広島の原爆の168発分、実際にはその数倍もの量であったと推測されています。大地は深刻に汚染され、汚染水の貯蔵量は限界に近づき、海洋放出する案まで浮上しました。今後、長期間にわたり、環境中に放出された放射性物質が食べ物と一緒に体内に取り込まれる「内部被ばく」の問題は続くと考えられています。コープ自然派では、特に乳幼児や妊婦が放射性物質をできる限り取り込まないよう、事故直後から食品の放射能検査と情報公開を行っています。
12、ゲノム編集食品
国内初のゲノム編集食品の流通が始まるというニュースをご覧になったでしょうか?販売の届け出が認められたのは、ゲノム編集の技術を使って遺伝子を操作し、血圧を下げる物質(GABA)を多く含むようにしたトマト。ゲノム編集は遺伝子組み換え技術のひとつですが、安全性の審査や表示のルールが遺伝子組み換えとは違い、私たちが知らないうちに口にしてしまう可能性が高くなっています。また今回のトマトは、インターネットでの申し込みを通じて来年春ごろから家庭菜園向けに苗の無料提供を始めるとのことで、ゲノム編集されたトマトとふつうのトマトが交雑し、広がっていってしまうことがとても心配です。ゲノム編集の技術「クリスパー・キャス9」を開発した研究者がノーベル化学賞を受賞するなど、注目されているゲノム編集ですが、食品に対する安全性はまだまだ未知数。コープ自然派はゲノム編集食品に反対しています。
13、というわけで、国産オーガニック
ここまで、「国産なら大丈夫というわけではない」というはなしを続けてきました。ではどうすればいいのか。コープ自然派では、国産派宣言の取り組みをさらにすすめ、「国産オーガニック」を広げようと取り組んでいます。遺伝子組み換えも、農薬の心配もないオーガニックを、国産で実現したい。そして、オーガニックな農を中心とした地域循環型社会をつくり、日本の食と環境を守りたい。コープ自然派の「新」国産派宣言です。
14、誰もが有機農産物を食べることができる社会へ
日本の有機農業の取り組み面積は、耕地面積全体の約0.5%(有機JASを取得している面積に限ると0.2%)。コープ自然派では2016年に農産物専門の子会社「コープ有機」を設立し、有機農産物の取り扱いに力を注いできました。その結果、コープ自然派が取り扱う農産物の60%以上が有機・無農薬栽培になりましたが、それでも不作のときなどは代替品が見つからず、お届けできないことがあります(申し訳ない)。もっともっと国産オーガニックの生産量を増やしていかないと「誰もが有機農産物を食べることができる社会」は実現できません。
15、食材セット という名のミールキット
いま大人気のミールキット。コンビニやスーパー、宅配サービスなどでも、時短かつ簡単に作れる独自のミールキットを種類も豊富に出しています。コープ自然派でも食材セットは大人気ですが、この食材セットが「誰もが有機農産物を食べることができる社会」につながる商品だということは意外と知られていないかもしれません。「料理にそんなに時間かけれない!料理苦手!でも安全なものが食べたい!」という願いを叶える食材セットであり、「作った野菜が売れなかったら収入が安定しない!農業を続けられない!」という悩みを解決する食材セット。たくさん採れすぎた野菜や形の悪い野菜も原料として使用することで、農家が安心して生産量を増やせる仕組みの一端を担っています。
16、プライベートブランド 自然派Style
国産派宣言を体現しているのが、プライベートブランド「自然派Style」です。加工食品を中心に、国産原材料を使用し、食品添加物に頼らず、毎日使える価格帯にこだわり開発しています。例えば醤油。私たちの身近な調味料であるにも関わらず、大半は輸入大豆が使用されています。また、丸大豆ではなく「脱脂加工大豆」と食品添加物で作った安価な醤油もたくさん出回っています。自然派Style「豊穣の恵」は高品質の国産丸大豆醤油を低価格で実現し、醤油として私たちが買えるのはもちろん、調味料やお惣菜の原材料として60社以上の食品加工会社に使っていただいています。200アイテムを超える自然派Styleを中心に、「未来に残したい食べもの」を開発し続けます。
https://www.shizenha-style.jp/
17、カタログのマーク表示
ところでオーガニックと有機と無農薬と省農薬と減農薬と・・・何が違うのかよく分からないことばが溢れていますよね。コープ自然派のカタログではマークをつけて、できるだけ選びやすい表示を心がけています。JAS法に定められた有機農産物・加工食品・畜産物・飼料には「有機JAS」マークを。圃場において栽培期間中(播種~収穫)に化学合成農薬を散布せずに作られた農産物には「無農薬」マークを。コープ自然派が定めた優先排除農薬・問題農薬を排除し、なおかつ除草剤や土壌くん蒸剤を排除した農産物には「省農薬」マークを(ただし、お米は1回のみ除草剤の使用を認めています)。加工品には有機原料の使用割合に応じて「100%オーガニック」「95%オーガニック」「70%オーガニック」の表示を。そのほか、特に力を入れている遺伝子組み換え、ネオニコ農薬、グリホサートについてもマーク表示をしています。「マークをさがせ!」遊びをしてみるのはいかが?
18、つくる人を増やす 野菜の場合
国産オーガニックを拡げるために、コープ自然派ではつくる人を増やす取り組みを行っています。2011年に設立した有機の学校「小松島有機農業サポートセンター」では、1000人の有機農業者を育てることを目標にしています。ここで技術を学んでもらうとともに、卒業生たちが就農し育てた野菜をコープ自然派に出荷してもらうことで、安心して農業に取り組めるサポートができます。このような有機の学校を2つ、3つと増やし、次世代の有機農業者をさらに育てていきたいと考えています。
https://www.komatushimayuuki.com/
19、つくる人を増やす お米の場合
無農薬米をもっともっと拡げたい!そのために農薬を段階的に減らし、省農薬米、そして無農薬米へと切り替えていったもらいたいと、「ビオトープ米プロジェクト」をはじめました。STEP1ネオニコチノイド系農薬を減らす=ビオトープ米 STEP2コープ自然派が定めるネオニコを含む優先排除農薬・問題農薬を排除(除草剤は田植え期の1回のみ)=省農薬米。 STEP3栽培期間中、化学合成農薬を一切使用せずに栽培=無農薬米 有機の学校に稲作コースを開設し無農薬米栽培技術を伝えることで、地域まるごと無農薬化を目指しています。国産派宣言の出発点はコウノトリの郷・豊岡市。全国にコウノトリの郷をつくることがコープ自然派の目標です。
20、つくる人を増やす 小麦の場合
国産有機小麦を探しはじめた2017年。そのとき分かったのは、国産有機小麦は生産量が少なく、ほとんど市場に出回ることがないという現実でした。そこで私たちは北海道の生産者を直接訪問し、小麦だけでなく、その畑で輪作されるすべての有機農産物を買い支える提携関係を作ることにしました。輪作とは、同じ畑で連続して小麦を栽培すると病害虫が出やすくなるので、1年目は小麦、2年目はてん菜、3年目は豆、4年目はじゃがいも、そしてまた小麦・・・というように畑を「輪して作る」栽培方法です。このサイクルすべてを買い支えることで、国産有機小麦を安定供給してもらえる体制を構築することができました。
21、アニマル・ウェルフェア
畜産品のオーガニック認定基準の重要な項目の一つがアニマル・ウェルフェアへの配慮です。アニマル・ウェルフェアには「5つの自由」という指針があります。1.飢えと渇きからの自由 2.不快からの自由 3.痛み、傷、病気からの自由 4.正常行動発現の自由 5.恐怖や悲しみからの自由 コープ自然派では牛乳、牛肉、豚肉、鶏肉、たまごなど、たくさんの生産者とともに、アニマル・ウェルフェア、そして国産オーガニックへの取り組みを進めています。
22、学校給食
地域で有機農業を拡げるための核となるのが学校給食ではないかと考え、コープ自然派では有機農業推進協議会の取り組みを進めています。これは有機農業に取り組む農業者を中心とした協議会であり、有機農家の交流や学習会を進め、学校給食への有機農産物納入を目指すものです。奈良でも、奈良県農民連と協力して今年度全5回の有機栽培講座を開催し、その最終回として1/27(水)に小祝政明さん講演会を開催します。子どもたちにこそ国産オーガニックを食べてほしい、そして地産地消の循環型まちづくりをめざしたい。そんな思いで活動を続けています。
https://www.nara.shizenha.net/event/1243/
23、法律
2006年に有機農業推進法ができてから14年。この法律において有機農業を推進していきましょうと決まったはずが、まだまだ日本の有機農業の取り組み面積は、耕地面積全体の約0.5%(有機JASを取得している面積に限ると0.2%)。奈良県でも有機農業推進計画をつくって取り組んでいますが、拡がりは遅々としています。それでも、法律があることで進むことはたくさんあります。この間、種子法の廃止や種苗法の改正など、持続可能な農業とは逆方向に向かうのではと懸念される変化も起きています。私たちにとって大切な法律がいつのまにか変わったりなくなったりしないように、そして必要な法律は新しくつくっていけるように、行政や政治にもはたらきかけていきたいです。