2021年1月のテーマ 発酵のチカラ
1、1月のテーマは「発酵のチカラ」です。
2、土と腸
元気な野菜をつくるにも、元気なカラダをつくるにも、発酵を支える菌のチカラが大切です。土壌の微生物の豊かさは、私たちの体内微生物の豊かさに直接関係しています。ヒトの腸内には100種類、100兆個の菌が棲みついており、その多くは土壌菌由来であることが分かってきました。わたしたちは、微生物生態圏の中で生きていることを改めて認識し、どんな環境で、どんなものを食べて生きるのか改めて考えてみる必要があるようです。微生物とともに生きるくらしについて、考えてみませんか。
3、菌のチカラ 土の場合
有機農業の土づくりは、土の中の土壌菌の働きで発酵が進むことでできあがります。土壌菌がふかふかにしてくれた土にしっかり根を張る。土壌菌が分解してくれた有機物を栄養としてしっかり吸収する。土壌菌によっては免疫物質を生成して、病害虫から守ってくれたりもします。そうやって菌のチカラを借りて元気な農産物をつくっています。逆に、化学肥料を与えられた植物は、栄養を手に入れるために根を伸ばしたり、根のまわりの菌の力を借りる必要がありません。その結果、土の中の微量栄養素を吸収するチャンスを失ってしまうのです。野菜のチカラは、土のチカラ!
4、菌のチカラ 腸の場合
腸内フローラ(腸内細菌叢)ということばの定着とともに、腸内細菌の重要性は知られるようになってきました。腸は、体全体の免疫細胞の半数以上が集まっている、人体で最大の免疫器官です。この腸内にいる菌でいちばん多いのは「土壌菌」であることが明らかになってきています。土壌菌は日和見菌の一種で、善玉菌か悪玉菌のうち多い方を助ける働きがあります。そのため、善玉菌を多くとるだけでなく、健康な土でつくった元気な野菜と一緒に土壌菌も体内に取り込むことが、善玉菌の働きをより活性化させ、私たちの健康に良い影響を与えることになるのです。
5、食物繊維
腸内環境を良くするには、発酵食品と食物繊維を一緒に摂るとより効果的です。食物繊維は大きく分けて2種類あり、それぞれ違う役割を担っています。「不溶性食物繊維」は、腸内細菌を増やすとともに、排便を促し、腸内細菌の死骸を絡めとって排出します。ほうれん草、オクラ、ブロッコリーなどに豊富に含まれます。「水溶性食物繊維」は、腸内細菌の大好物。腸内で水分を含むとゲル状になり、有害物質や胆汁酸、コレステロールなどを吸着して体外に排出します。野菜や果物、海藻類に多く含まれます。ごぼうやじゃがいも、きのこ、豆類には両方の食物繊維が多く含まれているんですって。つまり・・・いろんな野菜をバランスよく食べましょう!ということですね。
6、アレルギー
きれいすぎる環境は、腸機能障害や、喘息やアレルギーのような自己免疫疾患を引き起こします。免疫系は、日々体内外が微生物で飽和することによって微生物が敵か味方かを見分けることを覚えるので、きれいすぎる環境ではその学習ができず、自分の免疫系が自分に牙をむくということが起こり得るのだそうです。極度に殺菌された食物や水、抗生物質のくり返しの服用、土と自然との接触の少なさなど、わたしたちは「きれいすぎる環境」を求めていないでしょうか。
7、化学物質過敏症
きれいすぎる環境といえば、「よい香りすぎる環境」が気になります。汗臭さを消す制汗スプレー、体臭を消す除菌シートや香水、トイレや車には芳香剤、洗濯には香りつきの洗剤や柔軟剤、衣類や布製家具には除菌スプレー。これらはすべて化学物質であり、吸い込んだ香り(化学物質)はダイレクトに脳に影響します。一度に大量の化学物質にさらされたり、低濃度でも繰り返しさらされることで化学物質過敏症を発症することがあります。いったん発症するとその後は極微量の化学物質にも反応して、頭痛やめまい、吐き気、倦怠感や鬱、記憶力・集中力の低下などの体調不良に悩まされます。発症の仕組みは花粉症と似ていますが、症状は人によって多岐にわたります。日本では10人に1人が何らかの症状があるといわれています。香害の加害者になっていませんか?
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8、発酵のチカラ
発酵とは、微生物が生きるために有機物を分解し、その過程でヒトに有益な物質を作り出すこと。発酵の働きで出来る発酵食品は、菌のチカラによって栄養価が高く、消化吸収が良くなり、日持ちも向上するなど、様々な利点を持ちます。日本は、気温や湿度などにおいて、発酵に適した気候に恵まれており、さまざまな発酵食品が生み出されてきた、世界でも有数の発酵大国です。毎日の食卓に、ぜひ発酵食品を取り入れていきましょう。
9、みそ
みそは、大豆に、塩と麹(こうじ)を加えて発酵させて作る発酵食品です。麹とは、蒸した米・麦・大豆などにこうじ菌を繁殖させたもの。米麹を使ったものを米みそ、麦麹を使ったものを麦みそ、大豆麹を使ったものを豆みそと呼びます。「みそを食べていれば医者要らず」といわれるほど昔から健康と深く関わっており、主要なたんぱく質源であるとともに、発酵によって大豆より栄養価が高く消化吸収がよいものになっています。自然派Style蔵出し糀みそは、米麹をふんだんに用い、深い甘さを引き出したみそ。お米にはコープ自然派の産直米「ツルをよぶお米」も使用しています。アルコール添加や加熱処理などを行わず、発酵が続いている状態でみなさんのお手元に届きます。
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10、醤油
醤油は、大豆、小麦、こうじ菌で作った麹に塩水を加えて発酵させる発酵食品です。蒸した大豆と炒って引割りした小麦で麹を作り、塩水と混ぜてもろみを作ります。もろみを1年以上発酵・熟成させた後、しぼったものが醤油です。仏教伝来とともに日本に伝わったと考えられている醤油。古くは「醤(ひしお)」と呼ばれ、今のもろみのような調味料として平安時代から使われていたそうです。現在のこい口醤油の原型は江戸時代後期に確立したと言われています。自然派Style特選丸大豆醤油「豊穣の恵」は、国産にこだわり、毎日惜しみなく手軽に使える醤油を目指しました。原材料の大豆・小麦・塩はすべて国産。熟成期間は6カ月以上で、国産丸大豆の比率を上げることで醤油の旨み・コクを高めています。
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11、みりん
みりんは、蒸したもち米に米麹を混ぜ、焼酎を加えて熟成させて作る発酵食品です。みりんの起源については、日本に古くからある練酒、白酒などの「甘いお酒」の腐敗防止のためにアルコールを加えていたのが改良されてみりんになったという説と、中国から「密淋(みいりん)」という甘いお酒が伝来したという説の2つがあります。もともとは飲用で、清酒(日本酒)が一般的になる以前は甘みのある高級酒として飲まれていたものが、やがて料理のコクやうま味を引き出す調味料として使われるようになりました。自然派Style「瑞穂の恵」は、100余年の歴史を持つ蔵元が日本酒の伝統製法を活かして仕込んでいます。みりんの旨みとお酒の風味の両方を併せ持つので、お料理に照りやツヤを出し、まろやかな甘みに仕上がります。
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12、お酢
酢は、純米酒に酢酸菌を加えて発酵させて作る発酵食品です。中国から酒の醸造技術とともに米酢の醸造技術が伝来したと言われています。ちなみに純米酒からつくったものは米酢ですが、ワインから作ればぶどう酢やバルサミコ酢、シードルから作ればりんご酢になります。自然派Styleマイルド純米酢は、その名前の通り、純粋にお米だけで作られた米酢です。一般的に米酢と呼ぶために必要なお米の量の約5倍を使用しています。昔ながらの静置発酵で約40日じっくり発酵させてうまみとコクを引き出し、さらに氷温熟成で米本来のよい香りを引き立たせています。みなさんの手元に届くまで約4 ヶ月。しっかり熟成し、時間をかけてきちんと発酵された純米酢は、クセがなく香り・酸味ともマイルドな仕上がりとなっています。
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13、納豆
納豆は、蒸した大豆を納豆菌によって発酵させた発酵食品です。納豆をつくる納豆菌は腸内の善玉菌の大好物。生きたまま腸に届き、善玉菌の働きを活性化させるのに役立ちます。自然派Style大粒納豆は、生協と40年来の産直関係を築いてきた北海道上士幌・渡部さんの無農薬栽培大豆を使用しています。渡部さんは、北海道の広大な農地で「組合員のみなさんとスクラムを組んで日本の大豆を守る!」という想いを持ち、土づくりからこだわって無農薬で大豆を栽培しています。そんな渡部さんが育てる数種類の大豆のうち、納豆に適した「ユキホマレ」を選んで使用。甘みとコクが強く、大粒で程よい歯ごたえがある「ユキホマレ」の特徴を最大限に生かせるよう、ふっくらと蒸し、じっくりと時間をかけて熟成しています。
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14、漬物
漬物は、野菜を植物性乳酸菌によって発酵させた発酵食品です。日本の一般的な漬物のほか、キムチ、ザーサイ、メンマ、ピクルス、ザワークラウト、アチャールなどなど世界の漬物もよく食べられるようになっています。植物性乳酸菌の特性は、酸に強く生きたまま腸に届くこと。乳酸発酵によって、栄養素によっては野菜を生で食べるよりも豊富になることがあるのも嬉しいポイントです。漬物は本来、発酵でうまみを引き出し、塩分などで保存性を高めた保存食のはずですが、市販の漬物では化学調味料や保存料などの食品添加物を使わずに作られたものを探すのが難しいような状況です。コープ自然派では、食品添加物に頼らず、伝統的な製法でていねいに作られた本物のおいしさを次世代に残していきたいと考えています。
15、ヨーグルト・チーズ
ヨーグルト・チーズは、牛乳を動物性乳酸菌によって発酵させた発酵食品です。動物性乳酸菌は、熱や酸に弱く胃酸で死滅してしまいますが、その死骸は善玉菌のエサをなり、善玉菌の働きを活発にして腸内環境を整えることに繋がります。よつ葉プレーンヨーグルトは、国産自給飼料に取り組む17戸の酪農家の生乳が原料。牛に遺伝子組み換えではない飼料を与え、エサからこだわっているので安心です。また生きて腸まで届くビフィズス菌「Bb-12」が含まれているので、腸内を改善してお腹の調子を整えます。よつ葉シュレッドチーズは、じっくり熟成させた芳醇な風味のチェダーチーズと、のびの良さが魅力のモッツァレラチーズをブレンド。チーズ同士がくっつくことを防ぐ添加物「セルロース」は使用していません。
16、鰹節
鰹節には「荒節」と「枯節」の2種類があり、かつおを煮詰めて煙でいぶしただけのものを「荒節」、「荒節」にかび付けをして発酵させたものを「枯節」と言います。この「枯節」が発酵食品です。鰹節の発酵に使われる菌は、カツオブシカビと呼ばれるこうじ菌の一種です。このカツオブシカビの働きで、焙乾だけでは取り除けない水分を除去し、鰹節のうま味を決定づける効果をもたらします。鰹節は製造工程で極度に乾燥させてカチンコチンにしてしまうので、かんなで削り、削り節とするのが一般的な食べ方です。日本のだしの魅力は、昆布の持つグルタミン酸の旨み、鰹節のもつイノシン酸の旨み、椎茸のもつグアニル酸の旨みが、1+1+1=3ではなく、そのおいしさは何十倍にもなると言われています。鰹節のだしのおいしさ、ぜひあらためて味わってみてください。
17、パン
パンは、小麦粉に水などを混ぜてパン生地にし、酵母菌のチカラで発酵させる事で(発酵の際に生じる二酸化炭素により)膨らませて、焼いたものです。酵母菌には、パン酵母、清酒酵母、ビール酵母、ワイン酵母など様々な種類があるのですが、どれも食べ物に含まれる糖をアルコールと炭酸ガスに分解する働きをしています。自然派Style恋する食パンを製造する米麦館タマヤでは、パン生地を発酵させる酵母づくりから手がけています。「日本ならではのパンづくり」目指して着目したのが日本古来の発酵技術を生かした米麹種の酵母。タマヤではお米と麹を合わせ、1週間かけて米麹種を育てています。現在使用しているお米は兵庫県産「コウノトリ育むお米」。野生復帰したコウノトリが住みやすい環境づくりの一端を担っています。
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18、紅茶
紅茶は、摘み取った茶の葉をもみ込んで完全発酵させ、乾燥させたものです。同じチャノキの葉でも加工の違いで、全く発酵させなければ緑茶、半発酵させれば烏龍茶、完全発酵させれば紅茶になります。茶葉中に含まれる酸化酵素の作用を利用してカテキン類を酸化発酵させることで、あの紅茶のきれいな赤色になるのだそうです。紅茶の産地としてはインド、スリランカ、ケニアなどが有名ですが、日本各地でも特色ある「地紅茶」が作られています。様々な産地の紅茶を飲み比べてみてはいかがでしょうか。
19、お酒
お酒の種類は数あれど、どれも酵母が糖をアルコールと炭酸ガスに分解する働きを利用して作られています。日本酒は米を麹菌と清酒酵母で発酵したもの、ワインはぶどうをワイン酵母で発酵したもの、ビールは大麦の麦芽をビール酵母で発酵したものです(ここまで醸造酒)。また、発酵後に蒸留することでアルコールの純度を増したものが蒸留酒で、泡盛、焼酎、ブランデー、ウイスキーなどなど原料や作り方の違いでたくさんの種類があります。酒は「百薬の長」とも「万病の元」とも言われます。体に良いか悪いかは別にして、食文化を豊かにする役割を果たしてきたことは間違いなさそうです。
20、世界はつながっている
酵母菌がパンを膨らませるのと同じしくみで、土壌菌が土をふかふかにしています。酵母菌がお酒をつくるのと同じしくみで、土の中の有機物を植物が吸える栄養の形にしています。土壌の微生物の豊かさは、地球の生物多様性、そして私たちの体内微生物の豊かさまでつながっています。菌とともに生きる世界を目指していきたいです。
21、映画「いただきます ここは、発酵の楽園」
コロナ時代の今こそ、おいしく楽しく免疫力をあげるためのヒントが満載の映画「いただきます ここは、発酵の楽園」の上映会を開催します。いろんな生きものの楽園、子どもたちにとっての楽園、微生物の楽園、わたしたちは発酵の楽園に住んでいたのでした。上映後は、学校給食をオーガニックにしていくための奈良県内の取り組みを少し報告させていただきます。オーガニック給食や、農を中心としたまちづくりに関心のある方、ぜひお越しください。