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日消連Web講座 第3回「種は誰のもの?」 参加報告
2020.6.25
今回の講座は農業ジャーナリストで日消連の共同代表でもある大野和興さんによる「種は誰のもの」―種議論を狭い制度論、法律論から解放し、種をめぐる物語を復活したい― という講座でした。(米田裕子)
1 種と風土 ― 秩父の山と里から
奥秩父の村と畑(秩父市大滝地区栃本、秩父市吉田地区石間)
傾斜地であるこれらの地域では林野率が98%と平らな畑を持つことはできないため「ななめ畑という農耕文化が発達し、ななめ畑を起こすための「えぐわ」という独特の農耕器具も使われた。この地域では地大豆として「借金なし」という品種が育てられている。秩父では「なし」という言葉は「返す」の意で借金が返すことができるほどたくさん採れるという。石間地区ではななめ畑で桑の葉を育て、蚕を飼っていた。まぼろしの芋といわれる「太白いも」は収量こそ少ないが、ねっとり系の味の良い芋。大滝いもは小ぶりなジャガイモで育てる標高や地域によって味が変わる(他では同じものはできない)。このように地域に合ったものを育てることで山民が飢餓になることはなかった。太白いもは戦中に収量が少ないことから一時期なくなりかけたが、種を継いで復活した。種は人と付いていて、人がいなくなると種もなくなってしまう。
2 種と権力
1910年の韓国併合や1918年からのシベリア出兵のために軍がコメを買い占め、米価が高騰
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米騒動が起こる。
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・産米増殖計画:
・米穀法制定
・朝鮮産コメを日本に移入
憲兵による朝鮮の在来種の引き抜き、農民拘束、肥料使用などが強制され、指示通りに作られなかった苗代は踏みにじられた。また定められた品種(陸羽132号)以外の栽培禁止された。これらは藤原辰史『稲の大東亜共栄圏』で「品種改良による統治」「緑の革命の先駆的形態」と描かれている
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日本国内の米価が下落し、困窮した農民を政府が中国東北部(満州)へ農業移民として送りだした。しかし、日本帝国の中国侵略の最先端に送り込まれ侵略戦争の先棒を担がされた一方で日本の工業化、軍事化のために朝鮮に化学コンビナートが建設され、硫安が増産され、化学肥料が生産された。当時朝鮮で植えられた耐冷、多窒素の陸羽132号の栽培にも多用された。敗戦による引き上げで日本チッソが水俣に立地され不知火海に排水を垂れ流したことで海と魚が汚染され、水俣病が発生した。
3 種と食
・京野菜の九条ネギは有名だが、細ねぎは一束が200gで流通に乗せやすいが、太ネギだと一束300gとなり流通に乗せにくくなる。きゅうりの表面に発生する白い粉は外界からの保護膜になっているにもかかわらず消費者から嫌がられるためにブルームレス(白い粉が出ない)品種が好まれるようになっている。これらのことは消費者の意識が変われば改善できること。同じように消費者の考え方を上手に使えば種苗法などもよい議論になるのではないか。
・古い品種が守られているのは、祭りや正月で必ず必要なものだからと作り続けられているものが多い。地域の食はコミュニティーがあることで守られてきたが、今は集落のコミュニティーが失われてきている。
・加賀の農書「耕稼春秋」には作付けのローテーションが書かれている。地域の風土、土壌によって決まる。土地に合った品種が欲しければ自分たちで作る。
4 種と人
・メキシコの種子バンクは、昔からの品種は収量が減らないが、種子バンクからもらった量の1.5~2倍返さなければならない。アメリカから入ってきたデントコーンは種の返却の必要はないが収量は減る。どちらを選ぶかを決めるのは農民(自己決定権がある)
・ポー・カレンの焼畑巡回農業では、同じ耕地でのコメの連作はせず2年目はハーブや野菜を育てる。新しい耕地は土壌や周囲の植生(特に竹の生え具合)を見ることに加えて、スピリチュアルな方法も考慮する。また1枚の耕地に様々な品種(必ずモチとウルチを混ぜて)を少なくとも6種類は混ぜ、新しい品種を自然交配で作る。
・秩父雑穀自由学校では、雑穀をはじめ大豆、大根、イモ類などの種取りを行っている。「コミュニティーと公共」の公共とは、助けられることもあれば助けることもあるという人々の関係性のこと。種がなければ自由学校から借り、多く採れれば多めに返すということ、つまり食べ物を作るものの倫理である。
インドやギリシャ、フランスやイタリアでも栽培されるイネは中国を通って日本に入ってきた。つまり「種に国家も国境もない」( 真壁仁著「日本の島のアジヤ的様式について」より)