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森に出かけてみよう !梼原の森オンラインツアー
■開催日:2021年1月13日
■場 所:zoomウェビナー開催
■主 催:自然の住まい協議会
コロナ禍でなかなか旅行に行けないどころか、年末年始の帰省もできずストレスが溜まる日々に、一度は行ってみたい梼原町のオンラインツアーの企画。 今回お話を聞かせていただいたのは高知県梼原町森林の文化創造推進課課長 立道斉さん。当日は梼原町のきれいな風景の写真を背景にお話しいただきました。
標高1,455m、四万十川の源流に位置し、面積の9割が森林の雲の上の町「梼原」。森林づくり基本条例を制定し「超長期にわたる森林経営を目指した森林づくり」を施策展開されています。「梼原」の語源は「梼(ゆす)」の木。算盤や木刀の材料になる木だそうです。1950年ごろ国の政策で植林が始まり、梼原の森の7割がスギ、ヒノキなどの針葉樹です。航空レーダーを取り入れて地形を測定し、木々の成長や間伐の促進状況を把握し、森の適正管理をしています。
梼原の森を構成する木はほとんどが9齢級(樹齢約45年)以上、つまり木材として利用可能な木です。その資源を生かしてコンクリートからの転換を推進し、公共施設の多くが町産材を使ったものになっています。中でも建築家 隈研吾氏がデザインした施設はオシャレで洗練された建物で、一度見てみたいと思わせるものばかりです。それらは「木造芝居小屋 ゆすはら座」の繊細な木材の使い方が隈研吾氏に感銘を与え、生まれた建築なのだそうです。
森を守る取り組みへの町民あげての団結力は、明治の合併以後、合併していない町だからこその結束力でしょうか。立道さんのお話には、何度も「森林づくりは人づくり」の言葉が出てきます。町産材を使用した校舎や図書館、体育館やプールで過ごせる子どもたちはなんて幸せなのでしょう。食べる物ももちろん大切ですが、呼吸する、その空気も大切です。子どもたちは梼原の木と同じように、しっかり根を張って、枝を伸ばし、まっすぐ成長していくことでしょう。
環境先進企業との森づくり事業も取り組まれており、「森には人を笑顔にする力がある」と立道さんがおっしゃっていたのが印象的でした。「顔の見える家づくり」の活動も魅力的で、木材のできる過程を見学し、家族の手形を木材につけることもできるそうで、完成した家にはすごく愛着がわきそうです。海外の安い木材を見直して国産材が広がると、森も人も笑顔になると思いました。
林業に携わる人は全国的にも減少・高齢化していますが、梼原でも林業者の半数が60歳以上で、若者の育成が急務です。任期3年の地域おこし協力隊としてⅠ・Uターン者を受け入れ、技術指導から新規就業を目指す「Re MORI」。技術者の育成・人財の保存・技術の継承をかかげる「梼原森林づくり大学校」創設の構想もあります。5年で20名の定住者を目指しているそうです。
また、木材生産の場としてだけでなく、生物をはぐくむ森の多面的な面を考え、「異齢の針広混合林」を目指しています。今は同じ樹齢の針葉樹が多くを占めていますが、広葉樹には動物の餌になる木の実がなり、里山の獣害対策にもつながります。100年後も、谷川の水が森を潤し、若者が森の恵みを生業とし、子どもたちの声がこだまする豊かなまちが続くために、異なる樹齢の、針葉樹、広葉樹それぞれの特性を生かした森づくりを進めています。
お話を聴いた後、「行ってみたい」と思っていた気持ちは「住んでみたい!」に変わっていました。森にくらし、森にまなび、森で結ばれる。私たちの次世代、さらに先の世代の子どもたちに豊かな森を残すために、まちにいる私たちも一緒に守り伝えていく必要がある。立道さんのお話を介して、梼原の森とコープ自然派の組合員がつながった気がしました。